ケ・サラ・サラ

ジムとプールとごはんの日記

離れて暮らす父 、肺の影、脳、急展開の奇跡 その2

そして25日木曜日。父からの電話。冒頭の第一声。

「あのね、パパ、今3000円のステーキ弁当を食べ終わったところ。。ふふ。。お祝いに!そういうことだから!!」

 

父はほぼ間違いなくステージⅣの肺がんのはずだった。医師がくるくるとマウスを転がして、まるで天気図の雲のように白い影がいくつも浮かんでくるMRIの画像を何回も繰り返し見せてもらっていた。

今日は最終的な診断の結果、今後の治療の進め方、大体の流れ、入院先や本人の希望についての話があるはずだった。

 

ステーキ弁当??意味がわからなくて無反応の私にたたみかけるように父は続けた。

PET/CT検査の結果、肺がんではなかった、交通事故の、そしてエアバッグの衝撃で肺に炎症が起きていたのでしょうと言われた。いくつかの影は消え去り、残っているものも小さくなっている。パパも結果を見せてもらったよ。先生と手を取り合って喜んだと弾む父の声を聞きながらその場に座り込んだ。

ひとは過度の緊張が解き放たれるとほんとにヘニャヘニャと崩れ落ちるのだな。

 

とにかく信じられないかもしれないけど、肺がんではないし、もちろん脳のことも大丈夫だし、入院の話も何もかもなくなったから。心配かけてゴメンねとますます大きな声が聞こえてきた。

 

信じられるかよ…

安心させようとしてるのかもしれないし…でもこの感じ…ほんとにそうなの?

 

うしちゃん、聞いてる?本当だから。パパも信じられないけど、そうらしいんだよ。いやさすがに先生もこんな嘘言わないでしょ。心配してくれて、帰ってきてくれてありがとね。

 

8日間ずっと霧の中にいた。悪夢の中を彷徨い続けてるような感覚だった。ついさっきまで靄がかかって焦点が定まらず立ち尽くしていた。

一瞬で世界が変わった。こんなことってあるんだな。パパってなんだかすごいひとだな。ありがたい。神様。

良かったねをふたりで何度も繰り返した。それしか出てこなかった。

じんわりと心が解れてくるのを感じていたら唐突に父が言った。「今日ね、大安って知ってた?」

 

「ちょっとね、これから宝くじを100枚買いに行くから!ほんとにありがとうね。ふふっ。当たるんじゃない?!」と言って電話が切れた。

間違いない。父はすごいひとだ。

 

***

事の発端は、交通事故だ。

青信号になりそろりと発信した父の車に左から信号無視の車が突っ込んできた。車は全損。父は意識がない状態で搬送されるも奇跡的に絆創膏程度の掠り傷が2箇所。

レントゲンに影が映る。肺がんが疑われる。

MRIの結果、ステージⅣ。脳の腫瘍も確認される。

脳転移であれば余命3ヶ月から半年。

脳の腫瘍は髄膜腫(90%は良性と言われている)である。

PET検査で肺がんではないことがわかる。

肺の影は事故とエアバッグの衝撃による炎症で、すでに小さくなっているし、なくなっているものもある。心配ない。全くの健康体を宣言される。

 

***

髄膜腫は7ミリ程度なのでそんなに心配しなくてもいいらしいが、脳外科で詳しく検査することになった。

車はペダルの踏み間違いを防止やサポート機能付きのものに取替えるか、これを機に免許証を返納するか、考えると話していた。

 

病気の不安が取り除かれたとはいえ、父も78歳だ。とりあえずの猶予をもらったということでもある。離れて暮らす親のこれからのことについてあまりにもノープラン過ぎた。自分自身も遠い話ではない。

 

もう、なんか、ほんとにね、ちゃんとしよう、考えよう、マジで…という出来事だった。

振り幅が大きすぎて、父からの電話の後も何日かは(夢ではないだろうか…夢だったらショック…)とふと考えている自分がいた。ここへきてやっと実感できた。喜びを噛みしめる毎日だ。こんな風にまとめられる結果が衷心より有り難い。

あーほんとに良かった!!